こんにちは、スピーチトレーナー高津和彦(こうずかずひこ)です。
今回はちょっと頭の回転を良くするような、日本語の深い話題を。
いきなりだが。
「品川の 固めの出しの よくきくは
下地もうまく なれし土佐武士」
これは江戸末期の狂歌。
(社会風刺や皮肉、滑稽を盛り込んだ短歌)
意味、わかるだろうか?
素直に現代文で訳すと、
品川の固め場(守備陣地)が良く効いていたのは、
準備も首尾よく 仕事に慣れていた土佐のサムライだったからだ。
分かりますよね。
ところがこれには裏の意味がある。
それは、
「品川の、堅めの出汁の 良く効くは
下地も美味く なれし土佐節」
(同音異句で書きます。音の響きは同じだが違う漢字)
意味は:
(土佐藩の鮫洲屋敷のあった)品川の、しっかりと出汁が良く効いているのは、
料理の基本に熟(な)れている鰹節(土佐節とも言う)があるからだ。
なぜ、この狂歌を取上げたのか。
それは先日、東京出張の空き時間、会場近くの品川区の浜川砲台史跡を訪ねた時に、案内板にこの狂歌が紹介されていたからだ。
ペリーが4隻の蒸気船でもって日本に開国を迫ったのが1853年。
翌年、土佐藩が築いたのがこの砲台だ。
こんにち、レプリカの六貫目大宝が置かれている。
大砲を製作できない藩では、丸太を削って造った見せかけ大砲もあったという。
そんな中で、江戸っ子たちは「さすが土佐藩!」と砲台を大いに讃えたという。
その江戸っ子たちの遊び心、
「料理も出汁が肝心、大砲も土佐藩は基礎が出来てるねぇ」
というのがこの歌には込められているのだ。
パッと見てそれらのことが分かっただろうか?
1-もちろんその時代の背景と、
2-この品川の地勢の知識と、
3-砲台に対しての興味と、
4-料理についての造詣
がなければ分からない。
さて、今回のポイントは、
「言葉の意味の幅」。
「だし」、「かため」、「下地」、「なれし」、「土佐ブシ」、
には複数の意味がある。
それを繋げることによって全く意味の違った二つの文ができることになる。
歌としての音は同じであっても。
これはズバリ、頭が良くないとできない。
上説、1~4の、広くて深い知識がなければ。
それと、元の意に掛けて、別の意も通してやろうという気持ち。
それが出来ると、
「お洒落」です。
それは、オシャレ。
カッコイイ!
と思いませんか?
「駄洒落」ではない。
軽々しく「ダジャレ!」って言わないように。
人の言葉を、「ダジャレ~!」、「オヤジギャグ~!」って言う人のほとんどが、
“シャレを言える力”のない人。
パッと瞬間的に同音異義語を見出せるというスピード性も含めて。
シャレた狂歌の一首も詠めない現代人に向かって先人は言うだろう。
「アンタに言われたくない!」
じゃあ、どうすればこの狂歌のような高度なレベルが言えるのか。
まずはダジャレでもいいからパッとその瞬間を捉えて口に出してみよう。
そしてレベルを上げる。
次に文意を通す。
その文意が、オシャレであって、その状況で2つの意味に取れるように、
文を整えられるようにしよう。
江戸時代の人々を凌駕しましょう!
ベストスピーカー的思考力を働かせてください。
ここで私め、一首詠みました。
「品川の 土佐武士レベルの 高い知は
まずは声に出せ それが良さ声(ヨサコイ)」
おシャレでしょ?
今回は本歌取りで締めます!
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プレゼン力向上:アドバンス講座 [C]―スピーチスキル-プレゼントーク/組立
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