こんにちは、スピーチトレーナー高津和彦(こうずかずひこ)です。
今回は今年最後のブログです。
1年の締めくくり。日本人としての正しい敬語について考察しました。
「ネギを入れさせて頂いてよろしいでしょうか?」
こんな言い方はおかしい!という記事が新聞に出てたよって
友人が教えてくれた。ラーメン屋での店員の声掛けだという。
ほんと、おかしいよね。
でも僕がまず思ったことは…、
「一億総敬語、持って回り表現」にどっぷりつかっている今の日本において、
まだこう感じる人もいるのだということ。そのことに安心した。
では、なぜおかしいかを分析しよう。
「ネギ、入れましょうか?」
これが普通の言い方です。
それが「入れさせていただく」になるのは、
動詞の「する」を、すべて「させていただく」に変換しましょうという誤ったへりくだり文化の象徴。
本来「させていただく」は、その意味の裏に、
「あなた様の許可を得たので、畏れ多くもさせていただく」があるのです。
それを「よろしいでしょうか」と、さらに重ねて許可を得ようと聞いている。
「させて」の時点でもう"する"ことは決まっているのに。
「ネギを入れさせていただきます」ならまだ許せる。
この表現段階なら、不要な敬語だけれど、持って回ってないから軽症だ。
それを質問形にするからおかしい。
そして、総論として「ネギを入れるのに、なんでこれほどへりくだるか!」
という心情的な違和感。
シンプルに「ネギは要りますか?」と聞けばいいだけのことなのに。
まぁ、それをストレートに言えない人、
瞬間的に「ネギは御入り用になられますでしょうか?」なんて言っちゃうんだろうなぁ。
その語彙変換能力、驚嘆に値する。
もう、スキあらば敬語、スキあらば持って回り言葉が蔓延している。
そして、その記事には「サービス産業のマニュアル言葉がその元凶だ」と決めつけてたらしい。
そんな表面だけの事じゃない。
それは、
1- 紙面の文字文化からの疎遠
2- 若年層のタメ口の蔓延
3- それを矯正するためのマニュアル化。
4- 失礼にならないようにとの深淵な配慮。
5- 結果、婉曲に表現する社会全体の表現弱体化。
と段階的に"正しい日本語"が喪失されてきている。
そう、社会全体の問題なのです。
すべて、
「する」が「される」になり、「いる」が「いらっしゃる」にまでなってきている。
その結果、無意味な濫用が「敬ってないのに敬語を使ってる」の違和感を人に与える。
話はそれるが、その点では関西弁敬語は違和感が少ないといえる。
「~る」の原形を「はる」と軽く変えればいいだけの事だから。
「する」を「しはる」、
「やる」を「やりゃはる」のように。
あ、ちょっと敬意を払ってんだなって思う程度。
そんなに気にはならない。
短いから違和感もない。
話し戻して。
「丁寧、正確、尊敬」まっしぐらの日本文化は突き詰めていくと…。
「ご注文のほう、繰り返させていただきます。コーヒーおひとつでございますね?」
「こちら、コーヒーになります」
になっていきます。
これ、胸を張って、「これが日本語だ!」って言えますか?
これから日本語を学ぼうとする外国人に教えますか?
あなた自身の子供に対しても。
"正しい日本語を話す"ことを真剣に考えましょう。