こんにちは、スピーチトレーナー高津和彦(こうずかずひこ)です。
今回はプレゼンテーションの本質について考えさせられるエピソードをお話します。
僕の知人のお嬢さんは海外帰国子女だ。
中学から現地のスクールに通い、高校までアメリカ文化メイン。
そんなわけで英語は堪能、ディベート得意、プレゼンも上手い。
とはいえ「最終的には日本社会でやっていくのだから」と、長期休みごとには帰国し、日本の学校で夏季/冬季補講をずっと受けてきた。
また毎朝5時には起床して、日本の書物を読むという勉強家。
しかし、やはり日本史に弱い、漢字の読み書きに難点がある。
彼女が中学生の時のこと。
僕が「徳川幕府と書いてみて」と言ったら「徳川"暴"府」と書いて、大笑いした。
まあ、確かに字は似てるな。
それにある意味こっちの方が的を得た字だ。
が、そんな彼女も、京都の大学に優秀な成績で入学。
経営学のゼミを専攻し、アメリカ流のプレゼンが一目おかれるようになった。
あるとき、ゼミでの研究発表で。
いつも通りのパワフルプレゼン、本人、ドヤ顔で大満足。
聴衆も気迫に押されて納得。
その後の懇親会で誰かが、
「きみが言ってたゾンゾクってどういう字を書くの?」
「そうそう、どんな意味?」
「私も気になってた。なんか新しい経営概念?」
それは彼女のプレゼン中に何回も繰り返された言葉。
「企業のゾンゾク意義は・・・」
「ゾンゾクを左右するのは・・・」
「日本経済のゾンゾクは・・・」
"ゾンゾク"連発で、プレゼン終了。
そこで初めて「存続」を「ゾンゾク」と読み間違えていたことが判明!
みんな、大笑い。
一方、彼女は「ふーん、そう読むんだったのね!」
へこたれるどころじゃない。
ここで僕が言いたいのは「プレゼンの下調べを十分に」ということではない。
つまり。
間違えていたにも関わらず、最後まで皆に一言も挟ませなかったその気迫。
皆を自分の土俵に巻き込むパワー。
聴いてる方が
「そういう言葉があるのかもしれない?」
「自分だけが知らないのでは?」
とまで思わせるその「気」。
すばらしい!
それぐらい自分の言に自信をもって言い切る。
それが引き付けるプレゼンの原点だ。
彼女の武勇伝(?)は他にも、
「付け焼き刃」を「焼き付け刃」
「道半ば」を「道はんば」
などなど、枚挙にいとまがない。
これらすべてを
「な~んだ!」で乗り越えてきた。
このくらいの負けない「気」がプレゼンターには欲しい。
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でも、やはり間違いは、無いほうがいいです。
事前準備は入念にね。