カーナビ、〇な点、×な点

こんにちは、スピーチトレーナー高津和彦(こうずかずひこ)です。

今回は少し啓蒙的な話。技術進歩が「人間能力」に与える影響についての考察です。

 


先日、友人が久しぶりに弊社に車で来ると連絡してきた。来方を説明しようとすると、
「いい、いい。わかる。カーナビ、あるから」という。

が、もうついて当然という時間になっても、なかなか来ない。
そうこうするうちに、汗だくでやってきた。
開口一番、
「ひどい目にあったよ~」

 

尋ねると、カーナビが、なぜかものすごく遠回りの道を指示。
このあたりの地理は全く知らないし、ナビに頼り切ってくるしかなかったらしい。

そこでふと、一昨年にロスに行った時のエピソードを思い出した。

それは・・・。

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ちょっと長めの休暇を取り、久しぶりの海外、ロサンゼルス行きを企画した。
ずっとロスで過ごす予定だったので移動は車でと決め、迷わずレンタカー。それは異議なし。

そこで、直近にアメリカから帰ってきた友人からのアドバイス。
ロスでは絶対「カーナビゲーションは必需品!」だよと。
それも、自分の使い慣れたスマフォでGoogle Naviを使って。
wifiルーターを日本でレンタルしていくのがベストだと。


僕は日本では基本はバイクで、あまり不慣れな所へも行くことはなく、旧式のナビはもう使わず、すべて地図でこなしてきた。
地図見るのは得意。
パッとイメージが頭に浮かんでほぼ間違うことはない。

だからこのアドバイスには半信半疑だった。
が、せっかく親切に言ってくれたので従うことにする。


出入国の煩雑な手続きを経て、無事、現地レンタカーに乗り込む。
自分のiPadのナビモード・セッティングもOK!


確かに便利だ。

次々に、曲がれだの、直進だの、前方左だの、指示してくる。
おまけに画面が刻々とリアルタイムに変化していく。
現在地をいつも地図で示してくれるので、目的地さえ打ち込めばどんなローカルな場所でも「経路」を瞬時に地図上に現してくれる。
距離も、到着予定時刻も!

また、渋滞の場所も表示し、複数の経路をも示してくれる。
そして渋滞の状況により、到着予定時刻が刻々と変化していくのだ!


運転に集中するのはもちろんだが、一方、ナビにもかなりの神経を集中する。
何を言ってくるか、画面では自分はどの場所にいるのかを。
たしかに地図を見るより、時間の節約はすごい。


しかし。
疲れる!

毎日、ホテルに戻ってから、よくもこんな複雑な道をナビだけを頼りに
目的地に着いたもんだと、自分でも感心することしきり。


そこで、ふと思った。
ロスはもう何回も来ていて、そのたびにレンタカーを運転していた。まだナビなんてなかった時代から。

サラリーマン、日本電産時代の海外商談。
社長を助手席に乗せて、ニューヨークからコネチカットへ何時間もハイウェイを、地図をチラ見しながら運転した。
時にぶつかりそうになったことも。
そんな時代もあった。

よくナビ無しで運転していたものだ!
いったい昔はどうしていたんだろう?


思い返せば、車で出発前にハイウェイ地図を凝視。
「ルート100を○○まで北進XXマイル、そこでルート10の△△方面に乗り換えXXマイル、□□で降りる」。

こんなふうに出発前に目的地まで、必死で頭に叩き込んで、運転中、必要ならば地図をチラ見していた。
また、家の番号が偶数番は道路の左側で、奇数番は右といった情報も自然と理解していっていた。
だから、今、自分はどこにいてどこに向いているというのはいつも分かっていた。


昔の自分の脳のほうが、地図把握はとても優れていたのだと、少し複雑な気分になった。
人間の能力は技術の進歩と反比例する。


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そうだ。
これはスピーチも同じだ!


自分は「何を話していて、何に向かっている」というのはいつも分かっていなけりゃいけないんだ。
目的地をしっかり把握し、その過程がだいたい頭に入っていれば、自ずとたどりつく。

「地図チラ見」は、「メモ」だ。
頭に入っていれば、メモ無しでもいい。


ナビに頼るとナビの言うとおりに運転するだけ。
目的地には着く。
間違いなく。
でも自分の思考は停止する。


同じく、スピーチで完全原稿(=ナビ)に頼ったとすると。
間違い無く、読み終えることはできる。

が、大事なことが失われてしまうのだ。

それは、
自分自身の「創造力」、自分で考えるという力。
そして、
"道中"における「聴衆の感動」である。


結論:

ナビは人間の頭をバカにする。
 

 

【関連サイト】
"スピーチ力向上セミナー:あがらず伝える/聞き手を引き込む―パブリックスピーキング獲得セミナー